野毛山幻像
THE illusion OF EMOTION
今回の作品は前シリーズ『動物園をみって回るのはまじめなことだ』を基づいて製作した。
人工反射材を人手の形による作ったサルの足跡の表面につけ、
森の中に置いて、誘導経路を形成する。 つまり痕跡を通して展開された動物の行為を出発点として、人間がサルを探しに森に入る。
小屋の外側全面に反射するシルバーシートをつけている。
小屋自体を隠している。来場者もシルバー シートで写され、それ
自身を映す監視カメラのようになった。しかし、内側を見ることは
危険を伴っている 状態で、垂れ下がった糸が網状に編まれていて、
枝の先を削り尖った武器で形成されている。すべてが中心に
向かっており、窓から内側を見ると、そこには観者の顔が写される。
もともと捕まえる側の人間は、 この小屋の中では捕獲対象になっている。この小屋はある意味では人間を狩って捕らえる罠なのである。
小屋の中の削り尖った枝の先には、元々あちこちに貼ってあるはず
の「猿を探している」ポスターがあった。 武器が付いているこの
罠は、人間がサルを捕まえるために建てったものなのか?
それとも、サルが人間を 捕獲するために建てたものなのか?
狩りの結果が明らかになるまでは、
どちらが優勢なのかはわからない。




2021年に長野県小諸市で約1ヶ月かけて製作した作品である。
滞在製作地は、山の奥の森である。
小諸市にきた最初の1週間で、森の中に歩いて見回ると、人々の生活圏に近い森には動物はいないものの、熊の糞や動物の足跡、キノコを食べ た跡など、動物がいる気配があることに気づかされたのである。地元の新聞を読むと当地の街にはサルがよく出没する。
上述を踏まえた上で、「この未確認生物の足 跡はもしかしたらサルの足跡ではないか?それとも人間だったのか?」という発想がでてきた。

人間はサルから進化してきた。人間は這う姿勢になると手の形がサルの足跡の形と同じになり、一番猿に近いと思う。人工反射材を人手の形 による作ったサルの足跡の表面につけ、森の中に置いて、誘導経路を形成する。
つまり痕跡を通して展開された動物の行為を出発点として、人間がサルを探しに森に入るという能 動的な行為も作品の中に置き、サルが森の奥に逃げ帰ったことを摸擬していたである。






